突然ですが、あなたは「自由」という言葉に、どんなイメージをお持ちでしょうか?
企業に勤めて毎日忙しく過ごしている方は、組織や人間関係などのしがらみから解放されて、何にも縛られない「自由」を手に入れたい。「自由」こそ人生で手に入れたいもの。
このように考えているかもしれませんね。
「仕事をしなくてもいい=自由、幸せ」
「仕事をしなければならない=不自由、不幸」
一見すると、何も問題ない構図に見えるかもしれませんが、しかし私は「自由」をそういうものではないと考えています。
むしろ、何にも縛られない、すべてが自分の思うままという「完全な自由」は、ともすれば「不幸」にも近づくものだとさえ思っているくらいです。
本来、仕事とは人を不自由にするものではありません。
本当の意味で「自由」を手に入れるために必要な、尊く価値あるものなんです。
働き方改革が本格始動し、さらにコロナウイルスの世界的流行で、これまでの仕事や働き方が見直されるようになった2020年。
あなたも改めて、仕事について考えたことや感じることが多くあったかと思います。
そこで今回は私の考える「自由」や、そこに欠かせない「仕事の価値」についてお話をしていきましょう。
あなたもここから、心から豊かで有意義な人生を実現するためのヒントを手に入れてもらえれば幸いです。
「自由」が「不幸」に近づく理由
まずは、先ほどお伝えした「自由」が「不幸」に近づく、とはどういうことなのか説明しましょう。
「自由」とは、何にも干渉されず、自分の思うままに振舞えることを言います。
このワードにネガティブなイメージを持つ方はほとんどいないでしょうし、「自由」を手に入れるために、日々のお仕事を頑張ったり投資に取り組んだりしている方も多いはずです。
もちろん、そのイメージそのものは間違っていません。
目指すべき目標として掲げるのも良いでしょう。
ただし、「それだけ」にこだわってしまうと危険です。
もしかすると、あなたの人生は豊かなものから遠ざかってしまう可能性がある、というのが私の伝えたいことなんですね。
たとえば会社勤めをして連日忙しく過ごしている方が、ある日突然、仕事もしなくていい、完全に「自由」な時間を手に入れたとしましょう。
最初の1~2週間は旅行に出かけたり、存分に趣味に打ち込んだり、家でのんびり過ごしたりと、久々の休暇を大いに満喫すると思います。
しかしこれが何か月も過ぎて、ひととおり好きなことをやりつくしてしまったら……。
不思議なことに、休暇のありがたみも薄れていき、むしろ、ただ自由でいることに苦痛を覚えるようになると思います。
もう少し身近な例で考えてみましょう。
会社にお勤めの方は仕事の日に頑張った分、休日の価値が高いというのはよくわかると思います。
「華金」なんて言葉がありますが、これもやはり月~金曜日まで仕事で土日は休日、というようにメリハリがあるからこそ、休日が楽しみになるわけですよね。
これが、毎日が休日という状態になってしまったら……。
あんなに楽しみだった金曜日の夜は「何でもない日常」の延長でしかなくなってしまいます。
確かに、仕事中は自分の好きなことだけをして過ごすわけにもいきません。
時間も場所もいくらか制限されるのは事実です。
ただ、これは「不自由」というべき状況ではありません。
人間はある程度束縛され、何かしら生産的なことをすることで、その分幸せで充実した人生を歩めると私は確信しています。
よくよく振り返ってみてください。
あなたはこれまで、お仕事はもちろん、地域の活動に参加したり家事や子育てをしたり、何かの形でコミュニティに属し、社会や他者の役に立つことを実践しているはず。
人はそうやって自然と「完全な自由」ではなく、何らかの組織に属しながら生きています。
これが、何にも属さず、自由でいることにさえ飽きてしまったら、自分自身の存在価値がどこにあるのか分からなくなってしまう。
むしろ人によっては、あんなに憧れた「自由」が、ストレスにさえなっていくのです。
それが続くと、精神的に不安定になる人もいると思います。
だからこそ、仕事とはむしろ人間らしく自由で豊かに過ごしていくため、とても価値のあるものだと私は考えています。
仕事がもたらす本当の価値
仕事をすることで得られるものは、「自由」や精神的な豊かさだけではありませんよね。
そうです、当然ながらお給料というかたちで、金銭も発生します。
そして、そのお金を使うことで社会にお金の循環を生み出す。
これこそが「仕事の価値」として、欠かせないものだと私は考えています。
たとえば、あなたが働いて得たお金で、どこかのお店でなにか好きなものを買うとしましょう。
そのお店にも、働いている人がいますよね。
あなたが使ったお金は、そこで働く人のお給料やボーナスとして還元されます。
お給料やボーナスを得たら、その人たちの家族も美味しいものを食べたり、家族団らんの時間を過ごしたりできます。そして、そのために使われたお金もまた、別のどこかに流れていく。
このように、お金の循環を促進するのは、すなわち人助けや幸せを分け与えることであり、非常に尊いものだと思います。
これは私の持論というだけではなく、偉大な先人の例もあるのでご紹介しますね。
Panasonicの創業者である松下幸之助のエピソードなのですが、彼は、日本経済が落ち込んでいた時に、家のほとんどの貯金を使って高級車を購入したそうです。
当然、奥さんに怒られたものの「今はものすごく不景気だから、家にあるお金を何かしら使わないと、世の中のためにならない。人助けだと思って自分は車を買った」と説明したとのこと。
さすがに、無条件に「全財産を使って買い物をしましょう」とは言えませんが、「経営の神様」である松下幸之助の行動からもわかる通り、消費者としてお金を使うことは、経済の循環を生む意味でとても意味のある行為なのです。
そして、その消費活動の大元となる「稼ぐ」という行為にもまた、とても価値があります。
「誰かのために働く」というと、イメージが湧きにくい方もいるでしょうか。
しかし私は、クロスグループの社員に向けても「自分のためだけに生きる人生は、価値を感じにくい」というメッセージをよく伝えています。
実は、人間というものは、自分のためだけに生きていると、辛かったり苦しかったりするもの。
家庭を持っている方などは、なんとなく想像しやすいかもしれません。
家族のため、と思うと、辛いことに対しても活力が湧いてくるものです。
また、仕事の中でも考えてみてください。
自分の働きがほかのチームメンバーの負担を軽くしたり、誰かの役に立ったりすることで、やりがいを感じる場面はありませんか?
誰かのために動いて、その人からお礼を言われたりすると、自分自身の存在価値も見出せて、さらに生きるパワーをもらえると思います。
そういった活力の源になっているのが「仕事」なのです。
もちろん、このような仕事の価値というものに目を向ける余裕もない、まずはお金が必要だから働かざるを得ない、という方もいるかと思います。
ただ、そんな方にこそ今回お伝えした「仕事の価値」を一度、思い返してみてほしいですね。
働くことはあなたのため、周りの人のためにもなることですし、何よりあなたが求める「自由」を得るためにも欠かせないものです。
ぜひ、あなたも有意義な働き方を見つけ出して、価値ある仕事を続けてくださいね。